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政府の9条解釈の推移を検証する |
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<以下は法学館憲法研究所講演会「日本国憲法を多角的に検証する」(2006年5月28日)での発言に加筆していただいたものです。浦田教授には法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証 〜憲法「改正」の動向をふまえて』(日本評論社)に論文「国連憲章と日本国憲法 〜武力行使へのかかわりを中心として」を寄せていただきました。(法学館憲法研究所)>
国際紛争において武力行使を伴う活動に日本は関わることができるのでしょうか。そのことについて日本国憲法9条はどのように解釈されるのでしょうか。私は日本政府がこのことをどう考えてきたのかを分析しました。政府の解釈が様々な現実に適用されており、それは現状を知る上で重要だからです。
日本国憲法がつくられた時期、国際紛争の解決策については国連の集団安全保障に期待する意見が有力でした。ところが日本国憲法が施行された後、やがて冷戦が進行していく中で、政府の議論は国連よりもアメリカによる安全保障や日米安保体制に期待する方向に変わっていきました。
その中で、国連軍への自衛隊の参加が可能かどうかがたびたび議論になったのですが、1960年代前半、池田勇人首相・佐藤栄作首相の政権下での政府内の議論には特徴がありました。当時の内閣法制局長官だった林修三さんや高辻正巳さんは政府を代表する答弁の中で、憲法9条は武力行使を禁止しているが、そのことは国連軍には及ばないような言い方をしていました。国連の活動は個別の国家の活動とは違うという理由などで、国連軍に自衛隊が参加する可能性を必ずしも否定していませんでした。
ところが、林修三さんや高辻正巳さんの考え方は戦後の政府の考え方の中では例外的だったようです。1960年代後半から政府内の議論は、国連関係の活動であっても憲法9条に謳われた武力行使を禁止する規定は及ぶのだという議論になっていきました。そのような議論の中で、国連の活動の中でも武力行使を伴うような活動かどうかよってそこへの参加の可否を判断するという考え方が確立していきました。
現在では、“その活動が武力行使目的のものかどうか” “日本の関わり方が参加か協力か”という2つの要素を組み合わせ、4つの場合に分けて考えるということになっています。なお、参加とは組織の一員になるということで、そうではない各種支援が協力ということになります。
日本政府は今日、まず第一に、日本は国連関係の活動でも武力行使目的の活動に参加することはできないと考えています。
第二に、武力行使目的の活動に協力することはできると考えています。
第三に、武力行使を伴わない活動に協力することはできると考えています。イラク特措法はこの場合であると説明しています。
第四に、武力行使を伴わない活動に参加できるかどうかははっきりしていないようですが、参加の余地を残すような答弁をしているように思います。
この4つの場合にはそれぞれ微妙な問題がありますが、少なくとも日本政府は武力行使目的の活動への参加はできないという解釈をしています。ここから今日の憲法「改正」の動きが生じていると思われます。
先ほど述べたように、日本政府は60年代前半に日本の自衛隊が国連軍に参加できる余地があるという答弁をしていたわけですが、90年代以降、この考え方が政府の外で再評価されてきています。その代表的な人物として、政界では民主党の党首になった小沢一郎氏、学会では国際法学者の大沼保昭氏(東京大)があげられます。私はこの考え方については疑問を感じています。60年代は、国連憲章に沿った理想的な国連軍のようなものができることを想定した議論だったのですが、現在国連に関わる軍事活動はそうではなくアメリカを中心とした多国籍軍という形で現実化しているのです。今日の日本政府の9条解釈の基礎には自衛隊の海外派兵に対する国民の根強い警戒感があったと思われますが、90年代以降の現実をふまえるならば、自衛隊がそのような活動に関わることについてはより一層慎重に考えなければならないと思います。
私は社会の現実について、日本国憲法の理念と結びつけて、十分に警戒心を持って見る必要があると思います。
浦田一郎氏:
一橋大学大学院法学研究科教授。『現代の平和主義と立憲主義』(日本評論社、1995年)、『憲法答弁集』(共著、信山社、2003年)、『立憲主義と市民』(信山社出版、2005年)、『いまなぜ憲法改正国民投票法なのか』(共著、蒼天社出版、2006年)など著書多数。 |