ドキュメンタリー映画「シリーズ憲法とともに歩む」
 
憲法ー歴史・未来館
 

<伊藤真と香山リカの本音トーク>
いまどきの人々と憲法をどう語り合うか・・・(5

2007/03/15

■世直し願望、すっきり症候群が改憲志向へ?

【香山リカ】なるほどね。私自身もそんなに、社会のこととか、憲法のこととかにすごい関心があったわけじゃないんですよね。それで、今でも憲法の深いところを知ったうえで言っているんじゃないですが、どうも憲法を「改正」したがっている人たちを見ていると、どう見てもね、何か正当な根拠があって言っているとはあんまり思えない気がしたっていうのが、私が憲法「改正」に反対し始めた一番のきっかけなんですよね。なんか説得力がある言い方で憲法改正が必要だって言ってくれる人がいたら、私なんかすぐ、ああそうなんだ、じゃあ必要かな、とそっちに行った気もするんですけれども。でもテレビの番組に出てきていっしょに討論する人たちの話を聞いても、なんか説得力がないですよね。
【伊藤真】はい。
【香山リカ】なんかその人たちは、非常に個人的な思いで憲法を変えたいっていう感じなんですよね。いわゆる時代の節目に立ち会いたい、とかですね。
【伊藤真】うん、ありますね。
【香山リカ】あるいは、私が変えてやる、みたいな、すごいヒロイズムがある感じ。
【伊藤真】おじいさんができなかったことをね・・・
【香山リカ】そうそう。ま、もちろん本人はそうは自覚していなくて、これは日本のためなんだっていうふうに思い込んでいますけれども。そこは私が精神科医だからかも知れないですけれども、やっぱりなんか個人的な思いで政治をしているように見えちゃうんですよ、どうしても。憲法を変えようって言っている人の中で、「私」というのを押し殺して、本当に「公」のためにこの憲法を変える必要性を話す人っていない、そういう話って、ほとんど聞いたことがないんですね。どうしても納得がいかないっていうところがね、大きいんですけれどね。
【伊藤真】なるほど。
【香山リカ】確かにね、宇宙船艦ヤマトの艦長かなんかになってね、「出航―!」とか言ったら格好いいだろうなぁ、気分いいだろうなぁって思うんですよ、それは。私テレビゲームが大好きなんで、ゲームの中でね、隊長とかになってね、部下に指示出したりとか、気持ちいいんですよね。
【伊藤真】そうですよねぇ。個人的な快感っていうかね。
【香山リカ】でもね、なんかそれ、怪獣ごっことかプラモデルごっこみたいなね、なんか非常に幼稚的な「なんとかごっこ」のリーダーになってる気分の人によって、そんな気分で憲法を変えられちゃたまらないなっていうようなのがね、非常に強いんですけれどねぇ。
【伊藤真】最近慶応大学の憲法の小林節先生とお話する機会が多いんですけどね。小林先生というのはずっと、いわゆる改憲派でいらっしゃったんですけれども、最近、今の政治家たちに改憲をまかせるわけにはいかないって、さかんに言い出すようになっているんです。
【香山リカ】そうなんですか。
【伊藤真】小林先生は改憲派ですから自民党の国会議員たちと交流があるだけに、彼らがどういう思いで憲法を変えようとしているのか、というようなことをすごく感じちゃうらしいんですね。
【香山リカ】なるほど。
【伊藤真】自民党の国会議員の多くは二世議員です。そういう人たちは、国民と自分たちは違うんだって思い込んでいて、国民をどうコントロールするか、支配するかってことを考え、自分たちの権力支配を永続化させ、自分たちの権力欲を満たすための道具として憲法を使おうとしている、ってことをすごく感じるらしいんです。それでもう嫌だ、もう臭いがするって言いますもんね。だから、もうそばに寄りたくなくなったって、そこまで・・・
【香山リカ】生理的な嫌悪感。
【伊藤真】そうそう。学者として憲法を見て、本当に純粋な国家としては軍隊があってもいいんじゃないか、理想的な民主的なコントロールができる軍隊があって、絶対海外へは出さないで・・・そういう軍隊があってもいいんじゃないかとか、やっぱりある意味で理想を追われるわけですね。ところが、現実の今の政治家はとんでもない、こんな政治家たちに改憲をさせたらとんでもないことになると思うようになったということです。
【香山リカ】うんうん。
【伊藤真】いろんなところで、もう今は、あの政治家たちには絶対に改憲をさせないって仰っているんです。
【香山リカ】そうなんですか。
ただね、今の日本っていう国がいろんな細かい生活のレベルも含めて、いい状況にないってことを感じてる人たちが、すごくたくさんいると思うんですよね。治安の問題とか、マンションの偽装とか、いろんなことに不安を感じていて、何かを根底的に変えないと、根本から変えないともうどうしようもないんじゃないかっていう、世直し願望というのかな・・・
【伊藤真】うん、うん。
【香山リカ】何かこのままじゃいけないっ、何かをリセットしたいと思ってるんですよね。それが改憲への期待にもつながっていると思うんですね。
【伊藤真】ある種のすっきり症候群ですよね。
【香山リカ】そうですよね。ま、それは憲法が変わったところで、一時的には何かリセットされたような気持ちになっても、決してそのもやもや感はなくならないんだっていうことを説明しなきゃいけないですよね。あるいは、その護憲って言っている人たちにも、そのもやもや感があるっていうことは認めて、その上で人々にどう語っていくのかということだと思うんです。
【伊藤真】そうですね。

 


 
企画:橘祐典、片桐直樹、大澤豊 
第一篇監督・脚本:片桐直樹 90分 短縮版
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小山内美江子(脚本家) 伊藤 真(「伊藤塾」塾長) 香山リカ(精神科医) 鬼追明夫(元日弁連会長)  品川正治(経済同友会終身幹事) 橘 祐典(映画監督) 辻井 喬(作家) 山田洋次(映画監督)

 
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