ドキュメンタリー映画「シリーズ憲法とともに歩む」
 
憲法ー歴史・未来館
  <伊藤真と香山リカの本音トーク>
いまどきの人々と憲法をどう語り合うか・・・(7)
2007/03/15

■治安を守るために本当な必要なことを考える

【香山リカ】そうですよね。ただ、いま自由っていう問題についても、ある程度自由を犠牲にしてもしょうがないから、安全な社会になって欲しいって切迫した気持ちになっている人も多いんじゃないかなと思うんですよね。あるいは、自由よりもっと大事なものがあるんじゃないか、っていうような雰囲気もあると思うんですよね。
【伊藤真】ありますね。やっぱりあの「9・11」同時多発テロ以降は、治安の強化を求める意見が増えました。
【香山リカ】そうですよね。
【伊藤真】やっぱりその恐怖、不安っていうのはものすごく大きいじゃないですか。自由が大切なことは頭ではわかる、でもねっ、ていうところがありますよね。
「24 - TWENTY FOUR」っていう映画があるんですが、テロリストが捕まって、それを拷問して自白をさせようとしているところに弁護士が駆けつけてきて、彼らにも人権があるんだっていうことを言うんですが、なんでこいつらの人権なんか言い出すのか、っていう雰囲気の作品なんですよ。
【香山リカ】へぇ。
【伊藤真】テロリストなんかには人権はないんだ、こんな場面で人権を持ち出すなんてとんでもない、っていう、そんな感じなんですよね。
【香山リカ】そうなんですか。
【伊藤真】私はそういうものがそのまま日本に入ってきて、人権とは何かということをきちっと学んでいない人たちがそれを見ると、テロリストなんかに人権があるわけないよ、とか、こいつらは人間じゃないんだ、拷問だって当然いいんだ、とかっていうことになっちゃうと思うんです。そういうのを若い人たち見てるっていうのは、なんかすごく怖い気がしますね。
【香山リカ】最近、少年犯罪について、よく学生たちの感想を聞くんです。私は、学生たちは犯罪を犯してしまった少年と近い世代だから、自分もイライラすることがあったとか、時には人に殺意を持ってしまうことがあるとか、っていう、わりと同情したり共感するところもあるんじゃないかなと思ってたんです。ところが、実は、今そうではなくて、こんなことをするなんて信じられないとか、こういう人は当然死刑にするべきじゃないかとか、あるいは二度と自分たちのこの地域に来ないでほしいとか、そんな感じなんですよね。
【伊藤真】なるほどね。
【香山リカ】奈良で子どもを殺害してしまったという小林死刑囚とか、あるいは秋田で子どもを殺してしまったという女性とか、そういう人たちって自分が子どもの頃にもいじめられていたりするんですよね。まぁ、その結果がああいう事件になったかどうかは別としてもね、ああいう犯罪が起きたときに、そうしたことも考えたりすることはあまりなくて、とにかくその個人がモンスターの心を持っていたんだとか、そんな見方がすごく多くなっているように思いますよね。
【伊藤真】うん、うん。
【香山リカ】もう、その人だけを処罰すれば済む、という感じですよね。
【伊藤真】最近の若い人は、犯罪を犯した人の立場に身をおいてみようということはあまりしませんよね。
【香山リカ】そうですね。学生たちに、あなたがもし犯罪を犯してしまった人たちだったらどうすんの、って言うと、いや、俺やりませんから、ってすぐ言うんですよ。そんなのわかんないじゃないですか。ねぇ。でも、俺そこまでしませんよ、って、なんかまったく根拠もなく言い張るだけ。もし自分だったら、とかっていうところで思考停止っていうか、考えないようにしてるんですよね、なんかね。
【伊藤真】やっぱり変な自信なのかもしれないし、自分を知らないってことなのかもしれないし。でも、ひょっとして自分もつい犯罪を犯してしまうんじゃないかっていう、普通そういう怖さってありますよね。
【香山リカ】だと思うんですよ。でも、なんか自分を棚にあげちゃうんですよね。
【伊藤真】犯罪が生まれた、その本当の原因って何なんだろう、っていうところは考えようとしないんですよね。おそらく犯罪を犯した人の生まれたあとの環境だとか、いろんなものが複合的にたぶん影響してると思うんですよね。
【香山リカ】そうですよね。
【伊藤真】テロリストについても、そういうのは殺人鬼、化け物であって、もう我々とは全然違う理解しがたい人間なんだ、教義のために自爆するなんて信じられない、っていうので終わっちゃうわけですよね。彼が、彼女がそういう行動に出なくちゃいけなくなっちゃった、そのバックウランは何なんだろうか、そういう地域の人たちはどういう生活をしているんだろうか、どういう生まれだったんだろうか、そういうことに思いを至していくと、やっぱりあながちその個人だけを責めても仕方がない、やっぱりそのテロの背景にあることをどうにかしなくちゃいけないんじゃないか、そこを視野にいれて日本が何をするのか、ってことを考えてみる必要があると思うようになっていくんだと思いますよね。
【香山リカ】先日、九州大学の教授が奈良の小林死刑囚の死刑が確定した日にコメントを出していて、その人を生み出した非常にひどい社会状況をきっちり考えないと、これは防げない、って言ってましたが、それってすごく勇気がいりますよね。以前だったら結構あたりまえの意見だったと思うんですが、今ではこんなこと言っちゃって大丈夫なのかな、みたいなところがありますよね。
【伊藤真】たしかに、なかなか勇気いりますよね

 


 
企画:橘祐典、片桐直樹、大澤豊 
第一篇監督・脚本:片桐直樹 90分 短縮版
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小山内美江子(脚本家) 伊藤 真(「伊藤塾」塾長) 香山リカ(精神科医) 鬼追明夫(元日弁連会長)  品川正治(経済同友会終身幹事) 橘 祐典(映画監督) 辻井 喬(作家) 山田洋次(映画監督)

 
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